De vs des devant les noms précédés d’épithète en français : le problème de petit
Itsuko Fujimura, Mitsumi Uchida, Hiroshi Nakao

Le Poids des mots, vol 1. Actes des 7ièmes journées internationales d’Analyse statistique des Données Textuelles,
Presses universitaires de Louvain, 2004,
p. 456-467


フランス語における「複数形容詞+複数名詞」に先行する冠詞 de と des の交替: petit の問題

藤村逸子、内田充美、中尾浩

日本語レジュメ


フランス語の複数不定冠詞のdesは、「複数形容詞+複数名詞」の前では、deに変わるのが原則とされるが、desが用いられることも多い ( ex. de bonnes conditions(好条件), des petits chiens(子犬))。本論文の目的は、この交替の詳細を17世紀から現在に至る大規模コーパスの調査に基づいて記述し、その交替を説明することである。
調査によって明らかになった事実の中で、とくに注目すべき点として、desと形容詞petit(e)s (小さい)との極めて強い共起傾向が挙げられる。これに関して、先行研究はほとんど触れていない。deとdesの交替は、伝統的に、社会言語学的な言葉のレベルの問題と、形容詞と名詞の間のコロケーションの強さによって説明されてきた。くだけた言葉遣いであるほど、また「形容詞+名詞」が複合語であるほどdesが現れやすい。しかし、desとpetitの強い共起傾向はこれらの要因で説明することはできない。なぜなら第1に、この傾向は、調査したあらゆるジャンル、あらゆる時代のテキストで観察されたし、第2に、petitが複合語を特に作りやすい形容詞ではないことが、コロケーションの強度を測る統計分析により、明らかとなったからである。我々は、それに代わる新しい説明原理として、談話の中での形容詞の「重さ(weight)」、すなわち、形容詞が談話の中で果す情報伝達上の重要度を提案する。この原理は、形容詞の語彙論的特徴と形容詞が談話の中で果す意味的・機能的特徴から構成されるものである。語彙論的に、あるいは談話機能的に「軽い」形容詞であるほど、それはdesと共起しやすく、「重い」ほどdeと共起しやすい。Abeillé & Godard (1990, 2000)の提案による「文法的重さ(grammatical weight)」の概念は、離散的であるが、我々の「重さ」は連続した尺度上にある。「重さ」をこのように特徴付けることによって、語彙論的要因と談話機能的要因とを同一の尺度上で取り扱うことが可能となる。
petitは形容詞のなかでもっとも「軽い」形容詞である。一方desは、後続する形容詞が情報上の重要性の「軽い」形容詞であることを示す働きをする。したがって、desとpetitとは共起しやすいのである。