1日目

1.        Enの発音で,語末がien,iemのときの発音が[T]enだけの鼻母音と発音が違ってくるのはなぜですか。(正書法には含まれないんですか)

·           条件変異です。[i]は,前舌閉唇開口度小の母音ですから,鼻母音の発音に影響をあたえて,[jE]ではなく,[jT]にします。

2.        単語のアクセントについてですが,今までアクセントのことをあまり考えずに読んでいましたが,音節が複数あるものは必ず最後が強いとうのは例外などはないのですか?あと,アクセントの無化というのはどういうことでしょうか。

·           アクセントをもたない母音にはもちろんアクセントはきません。それから,最後というのは,ほんとうは単語の最後ではなく,単語の意味的なまとまりのグループの最後です。たとえば次の文はアクセントが5つあります。アクセントの無化というのは,この例の場合にgrâceにはアクセントを置かないというような現象です。

         ↓   ↓    ↓        ↓      ↓

Les pêcheurs éviteront la tempête grâce aux prévisions de la météo.

3.        単純過去は物語や小説などでしか使わない時制なのですか。

·           そうです。もちろん例外はあります。

4.        Accent aigue accent graveなどが付くところを特に強めるわけではないのになぜ‘accent’なのですか?éèの違いもよくわからないのですが・・

1¨ Augmentation d'intensité de la voix sur un son, dans la parole
2¨ Élévation de la voix sur un son (accent de hauteur; accent musical). 3 ¨ (1549) Signe graphique qui note un accent (langues anciennes; espagnol, langues slaves, etc.). — Signe qui, placé sur une voyelle, la définit (en français). E accent aigu (é : fermé); grave (è : ouvert), circonflexe (ê : ouvert; plus long à l'origine).

5.        なぜ音節が母音が終わると閉音節になり,子音で終わると開音節になるのですか。

·           母音で終わると開音節,子音で終わると閉音節です。これは定義です。

6.        フランス語のアクセントが決まっているのはラテン語の名残ですか?

·           ラテン語はアクセントの位置が単語ごとに決まっていました。大雑把にいうと,フランス語では,ラテン語のアクセントのある母音よりうしろの音を発音しなくなったために最後の母音にアクセントがくるようになりました。たとえば,rosarose, Augustinus → Auguste.  なぜアクセント位置以降を発音しなくなったのかということについては,いますぐ返事はできません。

7.        コーパスとは具体的にどのようなことをするのですか?

·           2日目以降の話をきいてください

8.        今まで’r’という子音があれば迷わずのどの奥をこするような音で発音していたのですが,marquis[maxki]parole[parol]というように,[][r]を使い分けなければいけないということを知りました。そこで,初めて見た単語をどちらで発音すればよいのか見分ける法則などはないのでしょうか。

·           無声子音のとなりにあるrは,無声化して,[x]になります。

9.        語を音声記号に書き換える問題で,[a][a]をよく間違えました。日本語の/N/がまわりの環境によって[m][Y][n]になるように,フランス語の[a][a] もまわりの環境で区別したのですか?

10.    母音の音素が16,子音の音素が17あるとうことで,私は口の発達にあわせて発音できる音素が増えていくと思うのですが,発音できるようになる順番などはあるのでしょうか。

·           どんな言語にもだいたい存在する音素と,非常にまれな音素とがあります。たとえば,フランス語の[y]は非常にまれです。どんな言語にもある音素は発音しやすい音素と考えてもいいでしょう。[m][p][a]は,赤ちゃんが最初に発生する音ですから,簡単なんでしょうね。でも日本語には[p]は外来語にしかありませんねぇ。

11.    条件変異は日本語の単語を扱ってありますが,フランス語にも当てはまるのでしょうか。

·           もちろん! rの話は条件変異の話です。

12.    フランス語はどうして綴り字の発音の乖離が大きくてそのままなのでしょうか。もちろん日本語やアイルランド語のように下記と読みがぜんぜん見当つかない言語は他にもあるわけですし,フランス語の発音の変遷もあるのでしょうが,言文一致運動などはおこらなかったのですか?そして綴りを知らない人でもリエゾンは可能なのでしょうか。それこそ形態統語的文法理論にかなりフランス語の文章を正しく読むということは依存しているような印象が拭えません。

·           この問題は,言語社会学的な問題ですね。書記を難しいまま保持しようとする傾向のある言語は存在します。フランス語はそのうちの一つです。(英語よりはましかと思いますが・・)義務的なリエゾンは綴りを知らない人でも可能ですが,まちがったリエゾン(綴りどおりではないもの)も多いということです。

13.    フランス語のアクセントが全て後ろにあるというのは今日始めて知ったような気がしないでもないですが,なぜそういう風になったのか具体的な理由はありますか?確かに英語が前や後ろいろいろであることより自然な気がしますが。

·           上の質問の答えを参照してください。

 

2日目

1.       日本語では1人称の呼び方で,話し手が男か女かわかる場合があるが,フランス語では判断できないのか?男ことば,女ことばは存在するか?

2.       日本語には「俺,私」など性を区別する言い方がある一方,フランス語では「je」で一括していますが,フランス語にも何か男ことばのようなものがあるのですか。

3.       フランス語で花は女性名詞だから,星の王子さまに出てくる花も作者のイメージで女性になっているんでしょうと先生は言いましたが,そうすると翻訳を読むイタリア人は,花が女性として書かれていることに対して抵抗はないのでしょうか。

4.       たとえば,ペットとしてかわいがっている猫や犬が女の子だった場合,elleで受けてもいいんですか?

5.       星の王子様のきつねとバラの翻訳の問題のように,物語の中で人以外のもの(動物とか植物)を名詞の性とことなる性の登場人物として最初から設定したい場合,表現のしかたとかあるんですか?

6.       たとえばイタリアで,花を主人公にした話があったとしたら,それは男役になってしまうのでしょうか。

7.       professeurの女性化されて使われているものを探したグラフの中の「M―」というのはどのような例ですか?

8.       職業名詞の,MFの他の「M−」はどんな形ですか?

9.       職業名詞で,男性と女性両方がいる役職の宛名でたとえば,aux présidentes et présidents d’Universitéというのがありましたが,複数形でまとめてしまったりしてはいけないんですか。

10.   女性の先生を指して,「ce professeur」という使い方をしますが,同じ文の中で,代名詞を使ったり動詞を使ったりするときは,普通は女性形を使えばよいのですか。たとえば主語がce professeurであっても,その人が女性ならば,動詞は女性単数で表すのが普通ですか?

11.   日本語では「医者」や「パイロット」などは男性であると考えてしまうイメージの問題がありますが,フランス語では単語そのものに問題があるので難しいと思いました。

12.   職業名詞は日本ではあまり男女の区別のある例は少ないけれど,例えば最近,「看護婦」が「看護師」に統一されたみたいに,日本では男女平等という観点ではどんどん統一されていくけれど,フランス語は新たに女性をあらわす名詞を作っていくというのが興味深かったです。

13.   子供の服のデザイナーにはまた違った名詞があるのですか。

14.   1993年に「フランス語が公用語である」と憲法に加えられたきっかけは何でしょうか。

15.   1993年まで「フランスの国語はフランス語」というのが当たり前のことであったのに,なぜ今さら改めて憲法に書き加える必要があったのでしょうか。やはり他国文化の影響によるフランス語存続の危機感というのもあったのですか。

16.   こんにち英語が世界的にここまで大きな役割を果たす言語となれたのはどうしてですか?フランス語の世界の中での役割は今後どうなってゆくでしょうか。

 

17.   フランス語の明晰性は個々の話者によって保たれているのでしょうか。それともやはり辞書やl’Académie Françaiseががんばっているのとはまったく別に,一般の話者の間ではだんだんと文法性に対するこだわりのようなものは薄れていないのでしょうか。(それこそ,先生のおっしゃったようにフランス語から性が消えていく兆候のようなものがあるのでしょうか。)また,フランス本国のよりも,かえってヨーロッパから離れたフランス語で独自の変化をしているといったことがあるかと思いますが,それに対して,Association des Francophonesで何か調整などは行われているものなのでしょうか。

18.   何かまったく新しいものができてそれに名前をつけるとしたら,どのような基準で男性名詞・女性名詞のどちらかであるかを決められるのでしょうか。

19.   フランス語はなぜ日本語のように中性的な名詞を作ろうとしなかったのですか?

20.   中性名詞の「中性」とはどういう意味ですか。

21.   ラテン語が他のロマンス語に分化していく際に,名詞の性が正反対になってしまった名詞があるのはなぜですか。

22.   フランス語は音声学的に単語の語尾によって性を区別する力は弱くなってきたといえますか。

23.   どうして主に印欧語族の言語で名詞に性がつけられたのですか。

24.   私は英語と仏語が似ているので,同じ親なのかなと思っていたのですが,英語の親は何語なのでしょうか。

25.   類別氏をもった言語の話で,普段なにげなく使う「本」や「枚」などの意味について考え,とても興味深く感じました。類別詞がある言語は,日本語,中国語,タイ語とアジアに集中しているようですがそれはなぜでしょうか?また,ある言語において,類別詞と性の共存は成り立たないというような関係はあるのでしょうか。

26.   アカデミーフランセーズは,フランスの国内以外に対しても口出し(といったらよくないのかもしれませんが)をするのですか?たとえばベルギーやスイスに対してや,フランスの領土ある島などに対して。

27.   アカデミーフランセーズは,職業名詞の女性化に断固反対のようですが,アカデミーフランセーズの中の女の人の立場(意見)は,どちらなのでしょうか。

28.   フランス語には方言がないという人もいますが,どう思われますか。

29.   方言の定義とは?

30.   フランス以外のフランス語をつかっている国々では,フランスよりも女性化が進んでいるのですか?

 

 

 

3日目

1.        例文 "il lui a déchiré la chemise."で,同じく例文"il a pris sa petite main."のようにchemiseを修飾する語句がついた場合でも所有者の与格を使いますか?

2.        procès の意味がよくわからなかったので説明してください。

3.        論理構造モデルがよくわかりませんでした。

4.        場所をあらわす言葉は全部circonstantなのでしょうか。

5.        à + 人 もyで受ける動詞の文で,同時にà +場所を代名詞にすることはできるんですか?

6.        Regarde-moi ça)も,regarde-toiも「見てごらん」という意味ですが,違いがあるのですか?  "-moi""-toi"の使い分けがよくわかりません。

7.        昇格という用語について,文型の変化により主語ではないものが主語になるということですか。

8.        フランス語の勉強が絶対的にたりないため,y,lui,leurをまず今朝初めて知りました。(中性代名詞のle, y, enは教養科目のフランス語で一応は学んだはずなのですが。)問題になっていること自体はわかるのですが,今ひとつ自分の中でピントが当たっていない感じです。それゆえ,何をどう質問してよいのかすら分かりません。申し訳ありません。ただ,êtreavoirのお話はもう少し聞きたかったです。イタリア語のessereavereの違いも読んだことがあるのですが,ロマンス諸語に共通する問題なのでしょうか。

9.        ある言語において基本的な色を指す言葉(赤,青,白,黒)以外に,例えば日本語の「茶色」や「紫色」といった,あるもの自体の色をもひとつの色として考える傾向は,どの言語にも共通することなのでしょうか。

10.    「黄色い犬」といった言葉からうける印象の違いというのは,日本語には色を表わす言葉が沢山あるということと関係していると思います。黄色と茶色の中間を考えてみても,黄土色とかきつね色とかたくさんあります。日本では,広く認識されている色以外でも,名詞に「色」という言葉をつけて,描写することができますが,フランス語でも「〜色」といった表現はあるのですか?

 

 

4日目

1.        文学作品一つ一つのコーパスはありますか。

·           著作権の切れているものならば,たくさんあります。

2.        文章を入力したら自動的に振り分けられるようなシステムはありますか。

·           ちょっと意味がわかりませんが・・

3.        こんな辞書・事典があったらいい(辞典の形態はとらなくてもいいのですが)と思うのはありますか。

·           例えば語尾からひける辞書など,便利だと思いますが,今では電子辞書ならこういう引き方も簡単ですね。

4.        コーパスからファイルを秀丸エディタに取り込めばいいのですか。

·           実習してみますか?レポートの課題をみてください。

5.        口語的な表現と文語的表現のテキストをあわせて統計することはできるのですか。

·           ちょっと意味がわかりませんが,口語と文語をあわせることはユーザーの自由です。

6.        現代語のコーパスはあるのですか。

·           もちろん。授業で使ったCobuildのコーパスは全部,現在のフランス語のこーぱすですし,Frantextにも,新しいテキストも入ってます。

7.        コーパスで「de + le」を調べてみたのですが,けっこう例があってびっくりしました。こういうのは話し言葉にもあるのでしょうか。「de + le」とか言いにくい気がします。

·           « De le » leは,直接目的語のleですね。冠詞ではありません。

8.        他にもいろんな言語について調べられるのですごいと思いました。4日とも色々なテーマの講義で面白かったです。ありがとうございました。

·           そう言っていただいたらとてもうれしいです。

9.        過去分詞étéが出ないように,他に注意すべき点,プログラムの問題点はありますか。

·           注意すべき点は多々あります。プログラムを鵜呑みにしないこと。文献も鵜呑みにしないこと。自分で考えることがとても大切です。

10.    コーパスを使ってそこから,何らかの結論が導き出すことが出来たとして,その根拠として個別の言語と言語学の知識以外にも,統計的な見方,知識というものもやはり必須なのでしょうか。

·           そうですね。統計学の基礎も必要不可欠です。名古屋大学の国際開発研究科国際コミュニケーション専攻では,以下のような感じでコーパス利用のための色々な催しを行っています。

http://infosys.gsid.nagoya-u.ac.jp/dicom/events.html

11.    今日の講義は非常に難しかったのですが,また大変興味深く聴かせていただきました。コーパスというものが様々な言語研究に活用されるうるものだと知り驚きました。先生はまた金沢大学の集中講義に来ていただけれるのでしょうか。これを最後の質問とさせていただきます。4日間ありがとうございました。